櫻井美奈子さんとキタムラマサコさんに聞く飾る日日展

櫻井美奈子さんとキタムラマサコさんに聞く飾る日日展

「飾る日日(にちにち)展」が今週末に迫ってまいりました。
今回は、展示作家の櫻井美奈子さん<oruminailn/陶器>と、キタムラマサコさん<ガラス作家/葉壜(はびん)>の魅力に迫ります。


以前は同じお仕事で繋がっておられた櫻井さんとキタムラさん。今回はその時とは全く違う、作品作りでの共同展となります。様々な場で感性を磨かれ、ものを“生み出す側”となったお二人。櫻井さん、キタムラさんがそれぞれ、陶器、葉壜作りに進まれたきっかけは何でしょうか。

櫻井さん
大学時代に1年間のフランス留学を経験しました。美術館や美術品が身近にあるフラ ンスでの暮らし。古きよきものを目にする機会が多く、アンティークへの思いが積 もっていきました。また、親しくしていた友人がアートを学んでいて、作品を通じて自由に表現するという姿にも憧れを持ちました。
大学卒業後は某通販会社に就職、商品の企画を担当しました。クリエイティブで非常にやりがいのある仕事でした。この頃にキタムラさんと出会っているのですが、 彼女はクールで仕事ができて憧れの存在だったんですよ。
ガラスの道に進むと会社を退職され、その行動力や決断力も素晴らしいと感じていました。常に一歩先を行く、尊敬する先輩なのです。

私自身は、企業を退職した後は旅人生を送りました。北欧、アジア、様々な場所を 訪れる中で、当時から人々が使う器に興味を持っていました。陶芸を始めた頃は、世界の器の歴史に興味が湧きました。中世ヨーロッパの村には、鍛冶屋やパンやさんがある のと同じように、器を売る店があって、名も無き陶工が作った器は、人々にとって生活するための道具だった。自分がつくる器もそういう生活の道具であれたらと考えています。とにかく当時は世界各地の色々なものを見て、吸収していく 時期だったと思います。
旅から戻った後は、ギャラリー勤務を経験しました。企画展のDM作りなど、作品をどのように見ていただくか。やはりここでも表現するという仕事にやりがいを感じますが、結婚を機に山暮らしが始まって。ようやく陶芸ができる、と自然な流れで作陶を決意。修行が始まりました。

park | 飾る日日展

キタムラさん
ガラス造形の学校で2年間さまざまな技法を学んだ後、まだ自分らしいガラス作品がどんなものか見つかっていない状態で卒業。
さて、これからどうしていこうと模索していた頃のことです。吹きガラスは自分には向いていないと自覚していたので、違う技法を使って面白いものづくりができないかと手探りの毎日でした。以前から身近にあるガラスびんの個性的な形状や、内側にひそむ滲んだような 質感に美しさを感じ、何かに生まれ変わらせられたらと思っていたので、試しにびんを切ったり逆さに向けたり組み合わせたり削り込んだり。ひたすらいろんなパターンを試行錯誤し、ある時不意にこのびんを二つ重ねるカタチに巡り合ったんです。再生のものづくりということにも関心があり、草花も大好き、まさにこれだ!と直感しました。以来長きにわたり作り続けていますが、未だに新しい発見もあったりするんです。

park | 飾る日日展


お二人の作品は、どれをとっても唯一無二の存在感があります。
それでいて、日常にしっくり馴染む佇まいがとても魅力的だと感じます。
作品を生み出すという作業で、ご苦労なさっていること、喜びを感じる瞬間はどのような時でしょうか。

櫻井さん
陶芸の仕事は、体を使う仕事なので、遅くから始めた自分には体力的にきついことも多いですが、特に、冬に山の中で作陶するのは孤独との闘い。昼間は主人も仕事に行くので、薪ストーブの火を絶やさず黙々と轆轤に向かうことが楽しい時もあるし、孤独に感じることもあります。日々試行錯誤しているので、想像以上のものが窯から出てきた時、お客様に喜んで 使っていただけた時にはやはり大きな喜びを感じます。日々は孤独ですが、展示会でたくさんの皆様にお会いできるのも喜びの一つです。器を通して、たくさんの方々と繋がっていけたらと思っています。

キタムラさん
作品を生み出す作業の前段階としてガラスびんについているシールを剥がすという工程があり、手こずっています。糊が強すぎてとんでもなく剥がすのに時間がかかった時、軽い虚しさを覚えることがありますね。そしてやっと綺麗に剥がれた!と思っても乾かしてみると古いガラスびんの場合、変質して不透明になっていたりキズやヒビが入っていて使えないなどなど。素敵なびんほどありがちなんです。愚痴になってすみません。
喜びは、違うガラスびんどうしを組み合わせて絶妙なバランスが生まれたとき。逆光で葉壜を見るとき。キラッキラに輝いてくれて、手前味噌になりますが作り始めて長く経つ今でもハッと心を奪われる瞬間です。


櫻井さんにお伺いします。
静寂に包まれ、四季の移り変わりをすぐ目の前で感じる美しい山暮らし。自然の中に身を置くことで、生まれる作品はありますか。

櫻井さん
美しさ、厳しさ、どれも同じ自然から受け取るインスピレーションです。そこで暮らすということは、自然の一部として地に足をつけて暮らしていくこと。実際の暮らしでは、電子レンジも炊飯器も持たず、薪で暖をとるなどして暮らしています。もちろん食器洗浄機などもありません。そのような暮らしの中で作るものは、やはり扱いやすいもの。調理したまま食卓に出せるフライパンだったり、毎日洗っても欠けにくい器だったり。この器が使い込むほどに アンティークに変化していくような様子が好きです。他にもまだまだチャレンジしたいことがたくさんあり、今は陶器の中で旅をしています。

park | 飾る日日展


キタムラさんにお伺いします。
葉壜(はびん)という、繊細で温かな響きの言葉。キタムラさんの作品に出会って初めて知った言葉です。キタムラさんはこの言葉に、どのような思いを込めてらっしゃるのでしょうか。

キタムラさん
「葉壜(はびん)」は、ガラスびんのパーツが2つ入れ子状に組み合わさって出来た“一輪挿し”で す。漏斗(ロート)のシルエットをした内側のパーツに支えられ、 葉っぱ一枚でもうまくまとまってくれるところから名付けました。“びん”に当てる漢字は薬品棚にある古いガラスびんのイメージで“壜”に。花瓶があるなら、葉っぱのための器なので “はびん”、シンプルです。(笑)とはいえ、お花や枝ものもうまく収まってくれます!道端で摘んだ草花や何気ない葉っぱ、お花屋さんで見つけたお気に入りの一輪など 日々、気軽に生けていただけたらと思います。

park | 飾る日日展


お二人それぞれが思う、互いの作品(あるいは作家として)の魅力について聞かせてください。

櫻井さん
会社時代から、キタムラさんの感性に憧れを持っていました。
当時は、よく写真を撮られていて、透き通るような涼しげな色合いが印象に残っていました。ガラス作家への道を歩みはじめられた時は、驚きもありましたが、あの写真の透き通るようイメージの延長に向かわれるのかと納得もしました。
吹きガラスではなく、ガラス瓶を切って葉壜を作られているのも、キタムラさんならではの視点があって、素敵だと思います。何よりも、キタムラさんご自身がいつも新鮮な気持ちで葉壜つくりを楽しまれ続けておられることが素晴らしいと思います。関西でキタムラさんの展示を見させていただ時に、「いつか一緒に展示したいね」と言っていただけてとても嬉しく、そのいつかが今回、parkではじめて実現出来る事がとても嬉しいです。

キタムラさん
美奈子さんの活動拠点が関西方面なので、ほとんど写真でしか作品を目にしておらず実物に触れたのはparkさんでのオーバルプレートくらいなんです。ただ、陶芸を本格的に始める前に作られた花瓶は間近で見せていただき、とても印象的だったことを記憶しています。美奈子さんの丸っこい(失礼?)手から生み出される大らかさと持ち前の洗練されたセンスとが融合され、それはそれは素敵な器でした!陶芸で作品をつくられるようになり、早く作品を見てみたい!と思っていたので、今回もしかしたら誰よりも楽しみにしているのかもしれません。


parkで作品をご覧になるお客様へのメッセージをお願いいたします。

櫻井さん
東京では、はじめての展示となります。
今回は、はじめて一緒に展示させていただくキタムラさんの葉壜に合わせて、様々な花器を制作しました。またいつもparkで使っていただいている器を中心に、日常の器をお持ち致します。皆様にお会い出来たらを楽しみにしています。

キタムラさん
葉壜を作り始めてから今まで以上に野の草花に目を凝らすようになり、思いのほか野花の種類が多いことに驚かされています。 可憐で愛らしく、色とりどり。摘んで持ち帰ると部屋がパッと明るくなりますね。 草花を日々飾るための器をこの展示で見つけていただけたら幸いです。


チャレンジしたいことがたくさんあるとおっしゃる櫻井さん。Robert Frankの「life is moving」変化を楽しむ、という言葉がいつも彼女の胸にあるそうです。これまで歩まれてきた様々な経験が、櫻井さんのものを生み出 す感覚に作用し、またこれからの経験も全て彼女の感性を刺激し続けることでしょう。形にとらわれず、表現すること。櫻井さんの器は、展示ごとに全く違う表情を見せてくれます。それは、“空間”を大切に思っているから。空間に調和し、心地よく呼吸する作品たちは、そこに生える草木のようにしっくりと佇んでいます。

今回櫻井さんとの企画展に参加していただけることになったキタムラさん。parkを訪ねてくださり初めてお会いしたのですが、凛とした清々しいお方でキタムラさんの作る葉壜のイメージそのままだったのが印象的でした。美しく生まれ変わった葉壜は、その姿になる前にひとつひとつ情熱をもって手をかけられている。他にはない柔らかな輝きの秘密、その理由をほんの少し知ることができて嬉しく思います。葉壜とともにある生活は、日ごろ素通りしてしまいそうな道端の風景を変え、様々なギフトを与えてくれそうです。

櫻井さんの「生活する器」の逞しさ、繊細さ。
キタムラさんの「生まれ変わったガラス」の魅力。
是非、実際にお手に取って、お確かめください。


飾る日日展 空と光を集める花器
会期 : 2018年7月7日(土) 〜 7月15日(日)
定休日 : 月・火・水
営業時間 : 10:00 〜 17:00
会場 : park | 182-0011 東京都調布市深大寺北町1-2-1
作家在廊日 : 7月7日(土)

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